半分白目日記

思った、ことを、書いて、いきます。

花野のこれまでをつぶさに振り返りながら、なぜカンちゃんを愛せないのか考える

カンちゃん、好きですか。そうでもないですか。愛せますか。どうですか?

私はどうもあんまり……子役にどうこう言う気持ちはないんですけど、ちょっと即答はできかねます。どうしてこんな気持ちになるのでしょう。

この記事では花野の立場からこれまでを振り返り、一視聴者としてカンちゃんを見るときの気持ちがやけに冷めてしまう理由を考えていきます。

スポンサーリンク

 

五歳の誕生日に両親が決裂

涼次が鈴愛に別れ話を切り出したのは花野の五歳の誕生日(第18週「帰りたい!」105話)でした。

映画監督になるから別れてくれという涼次に、鈴愛は泣きながら抗議し、物を投げつけます。途中で両親を止めに入る花野。「死んでくれ」発言が花野の耳に入らなかったのは不幸中の幸いでした。花野は父と母の手を取り「仲直り」と仲裁しようとするも、決裂。涼次は誕生日プレゼントとしてキツネのぬいぐるみを花野に託し、家を出て二度と帰りませんでした。

離婚が決定的となり、花野は鈴愛から「森山」ではなく「楡野」に苗字が変わることを聞かされます。しかし花野は泣くことも、母を問いつめることもしませんでした。むしろ沈んだ表情の母を笑顔でなぐさめ続けました。自分が笑えば、母も笑ってくれると信じていたのでしょう。父の話をすると母の顔が曇るから、口に出すのもやめました。そのかわり、キツネのぬいぐるみをココンタと名付け、父の思い出をすべてしまいこむようにして肌身離さず可愛がりました。

東京から母の故郷へ

東京を離れる日、親戚の「三オバ」こと三人の大叔母は号泣して別れを惜しみました。花野にとっては今までずっとそばで見守ってくれた女性たちです。皆それぞれ今は独り身なこともあり、花野に惜しみない愛情を注いでくれました。花野は優しい三オバと離れるときでさえ、精一杯の笑顔を見せました。次にいつ会えるかはわからない。もしかしたら花野が大人になるまで会うことは叶わないかもしれない大好きな人たち。泣き顔よりは笑った顔をおぼえていてほしかったのかもしれません。

花野は鈴愛から教わった「おーちゃん(仙吉)が何でも買ってくれる。ただし年金の範囲内で」を何度も口に出して暗記しました。意味はよくわからないけど、これを言うと大人がクスッと笑ってくれるからです。三オバとの別れの際にもこの台詞でみんなを笑顔にさせました。父親はあれからずっと会えないけれど、ココンタがいつも一緒だから大丈夫。さみしいときには夜中にこっそりココンタに話しかけました。

故郷へむかう新幹線で、母は宣言通りシャンパンを飲みはじめました。シャンパンがよほどおいしいのか、母はしばらく上機嫌になったあとで眠そうにしはじめました。鈴愛のほかに頼れる大人がいない花野は必死に話しかけつづけ、母のうたた寝を阻止。そうやって鈴愛と花野とココンタは梟町に引っ越してきました。

スポンサーリンク

 

居心地の良い梟町

鈴愛の実家は花野にとって居心地の良いものでした。祖父母である宇太郎と晴は言わずもがな、曾祖父の仙吉、叔父の草太みんなが花野の世話をこぞってしてくれます。

保育園の送迎は叔母の里子や居候の健人がしてくれます。母の幼馴染や友人たちも構ってくれるし、年が近い従兄弟の大地もいるので遊び相手には困りません。

ひとつ気になるのは、東京にいたときよりも母と過ごす時間が減ったことです。母は新しいお店の開店準備や五平餅の修行に張り切り、「ふくろう会」の友人たちと親睦を深めるのにも忙しいようです。それでも花野はさみしさを口に出しませんでした。そんなときにはココンタにだけこっそり話しました。夜、ココンタと内緒話をしているときに鈴愛に見つかりそうになったこともありましたが懸命に寝たふりをしました。しかし毎回ばれていたようで、花野は「たぬき寝入りが得意」というイメージを鈴愛に持たれてしまいました。

笛を譲り受ける

ある日、花野は鈴愛から古そうな笛をもらいうけました。これを「律」の家の前で吹くと律が外に出てくるそうです。家の外からおかしな音がしたら大抵のひとは様子を見に出ていくのではないだろうか、と花野は思いましたが黙っていました。「律」の話をするときの母の目はいつもギラギラとしていて怖かったからです。

花野は言われるがままに笛を吹き、律を呼び出しました。律は驚きながらも嫌な顔はしなかったので花野はうれしくなりました。母は律と仲良くしたがっている。律もまんざらでもなさそうだし、花野は自分が大人たちを笑顔にしていると思うと笑いがこみあげてきました。そして気が向いたら笛を吹き、何かと用事を見つけて律の家にあがりこみました。律も、律の父母も優しくしてくれるので花野は良い気分でした。

変化しはじめる環境

これまでも変化が少ないとはいえない花野の環境でしたが、梟町でもまた少しずつ周りが変わっていきました。

仙吉が亡くなり、鈴愛が準備していた2号店がオープン。亡くなる前の仙吉が教えてくれた新しい店の名前は自分とココンタだけの秘密にしていましたが、ココンタがきゅうに「あの店の名前なんだったっけ? ボク忘れちゃった」と聞いてくるものだから教えてしまいました。そうしたら次の日にはすっかりみんなの知るところとなって、新しい店にもちゃっかりその名前がつけられていて驚きました。ココンタの口は羽より軽い。花野はしばらくココンタと絶交しましたが、父の思い出がつまっていることもあり仲違いは長く続かず、また一緒に寝るようになりました。

仙吉に続き、律のお母さんも亡くなってしまいました。律はもうじき大阪へ帰ってしまうようです。健人は2号店がオープンしてからあまり会っていません。センキチカフェが忙しいのと婚約者の麗子に夢中なようで構ってくれることが少なくなりました。鈴愛は律のことばかり。花野は自分もなにか夢中になれることを見つけようと思いました。そんなときに出会ったのがフィギュアスケートだったのです。

全力で跳ぶ

テレビで見たフィギュアスケートの真似をしてみると、今までにないほど周りの人たちが喜んでくれました。また外に飲みに行っていた母には見てもらえなかったけど、畳の上で思い切り跳んで回る爽快さは花野の心を魅了しました。跳躍しているあいだは、みんなの注目を一身にあつめることができます。これまで鈴愛という眩しすぎる太陽のような存在にかき消されがちだった自分が、そのときだけは唯一無二の主役になれるのです。あの畳の上での二回転ジャンプで花野は注目を浴びる心地良さを知ってしまいました。母はいつもこんな気持ちなのかもしれない、と思いました。

花野は母にあの手この手でフィギュアスケートへの情熱をアピールしました。絵を描いて見せたり、メダルのことを聞いたり。とくに、スケート靴を買いたいがためにお小遣いは貯め込んで、おやつに大地の肉まんを奪ったことが鈴愛には痛いほど効いたようです。おかげで「母親として娘にスケートをやらせたい」とまで思わせることに成功しました。これまでわがままを言わなかった甲斐があったというものです。母だけでなく、同時に周囲にも「花野はスケートをやりたい」と認識させました。

スポンサーリンク

 

再上京にむけて

母と二人、東京に再上京することになったのは計算外でしたが、梟町にはもうあまり甘えられる大人がいません。東京には三オバが居ます。父親にも会えるかもしれません。楡野家では肉まんのことがあってから草太の家族と鈴愛もちょっと気まずそうだし、宇太郎と晴もこのところ老いを実感して鈴愛の相手に疲れてきているようでした。

再上京はお金の面だけをのぞけばわりと良いことずくめかもしれません。なにより、花野の一番の願いであるスケートが習えるのです。宇太郎が名古屋まで行って買ってくれた新品のスケート靴もあります。律の息子の翼とは、将来「一瞬に咲け」さながらに跳ぶ人と撮る人になるという宣言もしました。 

客観的に見て思うこと

……と、ここまで花野の立場側から振り返ってみてわかったのは、周囲の大人にとても恵まれているということです。周りの人たちが自然と手助けしてくれて花野の面倒をみてくれるのが前提のところで鈴愛と花野はずっと暮らしてきました。東京では三オバ、梟町では家族や萩尾家の人間など。とくに梟町に帰ってきてからは鈴愛はまるで独身のように好き勝手に出歩き、自分のやりたいことだけを優先しているように見えます。保育園の送迎も人に任せきりで、花野と二人でどこかに出かけるような描写も皆無です。

これから再上京してどういう場所に住むかは知りませんが、ほかに知り合いがいないような土地で同じような生活はできないですよね。三オバもしくは他の助けてくれるような人が都合よく出てくるのでしょう。花野はますます親以外の大人に甘える術をおぼえて、鈴愛はこれまで通り花野とまともに向き合わずに生活していくのではないかという予想はつきます。

母親という立場からの印象がとても薄い

この朝ドラの軸には「ホームドラマ」と「母と娘の関係」があるそうです。

それでも朝ドラとして提案したのは、物語の軸の一つに、“ホームドラマ”ないし、“母と娘の関係”があったからでした。

インタビュー 脚本・北川悦吏子|NHK連続テレビ小説『半分、青い。』

思うに、鈴愛と晴の関係はエピソードも多いですが、鈴愛と花野になると途端に話が薄くなりますよね。 主人公から見て「自分と母親」は密に描かれていても、「自分と娘」の関係はあまり見えてこないんです。そこが薄いと、花野がどんな行動をとっても響いてきません。これまでの花野に寄り添った鈴愛の気持ちが見えてこないぶん、驚きも悲しみもとくに感じないんですよ。また近所の子がなにかやってるな、くらいにしか思えない。

それを思うと、花野が一歳くらいのときに高熱を出して、鈴愛が自分のように耳が聞こえなくなってしまうんじゃないかと涙ながらに医師に訴えていたシーンは伝わってくるものがありました。治ったら数年ワープしちゃって白目になりましたけど。そこ、スライスしないでほしかった。赤ちゃんから一気に今のカンちゃんになっちゃったときの気持ち。あそこが視聴者として花野を見守るテンションを分けるポイントだった気がします。

f:id:hanshiromemo:20180826094251j:plain

……こんなに花野のことを考えたのはドラマを見ていて初めてでした。

明日からは少し、カンちゃんを見る気持ちが変わるかもしれませんし、変わらないかもしれません。